スカートのふくらむ夢

 ながい一週間がおわる金曜日。5時限目は、机に隠れて爪をきれいにするのに夢中。睫毛も頬もいつもよりていねいに、色づいてる。たぶん彼はそんなこと、ちっとも気が付かないのだけれど。 チャイムが鳴ったら教科書を仕舞うだけ。すぐにゆけるようにしてあるから。
 今日こそは私が4組までいこうと思ったのに、彼のが早かった。迎えにこさせちゃっているようで、私はあんまり好きじゃないんだ。 素直になりたい、優しくしたいって胸に握りしめていても、先を越されてばかり。しぼんだちっさな勇気を、もて余したままいる。 ふたりで帰るようになってから、バスで通っている。自転車で並走すると話しにくいっていうのもあるけど、二人乗りがしたいから。
 シャツの似合う後姿みながら、くるくるくるとスカートをまくる。男の子のシャツは無造作な洗いジワと、身軽に羽織った潔さが格好いい。肩につかまって片足が宙に浮いたら、スカートが羽になる。下り坂で私達飛べるね、日暮れまでのトリップ。