なかなか会うことのできなかった男の子と夕方待ち合わせをした。避けられない状況におされておされて、10ヶ月ぶりなんてことになってしまった。 あまり人に話さずにきてしまった事も、重くならず言うことのできる人だ。すぐに笑いに浄化できる、そんな力を分けてもらった。
 東口のチネ・ラヴィータ8月のクリスマスを観て、紅茶とまぐろ丼で幸せ気分になって話をした。帰りがけに小さなショコラを手渡した、ありがとうを分かりやすくさし出せるのがいいと思って。寒い日とかクタクタになった週末に、甘い粒は一瞬でも味方になってくれるから。
 つぼみの幸せがそこらにふくらんでたら、とてもいいと思うんだ。チョコレート、好きじゃなかった私が疲れて口にした甘くて苦い味、今ではときどき無性に恋しくなるもんだから。


 映画館を出たときもう空は藍色で風がきゅんとつめたかった。映画のなかの8月を暖房のきいた小さな部屋でみつめるうちに、夏にすい込まれたクーラーボックスの冷気を思った。
 今考えるとまるで逆さまだ。冬に夏の暑さじゃなく、冬に暖かな所からみた夏に私は涼しさを思っていた。なんだかややこしいですね。