初恋と 恋になる夜明け

初恋
                                      初恋/aiko



 小、中と学校がいっしょ。
 すくすくとあたしたちは田んぼに囲まれた所で育って。
 気が多いあたしは、好きな人が同級生にいっぱいで毎日天国だった。
 初恋と呼べるとしたら小5の春。転校生でたちまち人気者になった人。
 おなじグループの子も好きだと知ってしまって言い出せなくなった。性格のきつい子だったし。
 ひっそりと想いを胸にしまっているつもりでも、うそをつき徹せない。
 顔に出ちゃうし、否定しきれなくて。(まったく…それは今でも変わっていない)
 でもバレてないと思い込み、ささやかな彼とあたしのエピソードを妄想混じりで紡いでゆく。
 バレンタインには本命なのに精一杯さりげなく装って渡し続けた、告白は一度もしないまま。結局中2の時部活のトモダチと彼が付き合っちゃって、泣く泣くあきらめた。みているだけじゃ実らなかった、初めての失恋。


 傷は癒えないまま、時は流れ中3の修学旅行。
 ホテルの夜はみんなはしゃいでいた。内線が鳴らした小さなきっかけのベル。何人かの男子がこっそり部屋へと来ることになった。女の子3人の部屋は狭いし、男の子たちは倍の人数いてそっちのが広いからと、深夜に移動する。
 仲のよい男子もいたし、ちょっぴりスリルでだけどそれ以上に楽しくて…。
 なかでも話しやすかった男友達とゴロゴロしながらふざけ合う。
 そのうちになんだか突然沸々と胸の奥がちいさく動いた。
 その音に逆らうことなく、あたしの手が彼の髪にさわった。
 そこから夜が全部明けるまでの記憶はおぼろげ、ただあの瞬間にすべてがあって恋のはじまりはちっとも色褪せてなんかない。