お昼時、偶然aikoの「スター」を耳にする。
 どうしよもなく胸の奥が熱くなってしまう、そんな声がこの世にはまだまだあって。ずるいくらいの魅力的な声に、思いがけず出逢えたりするのだ。
 声の印象、その人と声とを結びつけて覚えていることが、私はとても多い。下駄箱のむこう側の話し声、突然呼ばれた声の先にいる人を、視覚より速く見つけられる。
 何年か振りの電話でも、もしもし?のたった一言で記憶がよみがえる。
 ひとつの声で掻き乱されたり、有頂天になったりした。聞こえないフリなんかしたって、心にとどいてしょうがない。
 愛しいトーンは、時を重ねてもすっと心の戸にふれる。覚えてしまったものにはめっぽう弱い。