風をはらむ帆

 しておけばよかったなぁ…と思うことは幾つも。
 ふあん と天井に浮かんでは、すぐにいなくなる。
 後悔も未練も違うくて、後戻りするのは絶対にいや。再び通ってきたことに挑むなんて、とんでもない、体が先に爆発して消えちゃうとおもいます。


 「明日からは雨や曇りでそのまま梅雨入りするでしょう。」
 今日はめずらしく朝早くから起きていた。半袖ですごし易い、汗ばむ陽気だそう。
 レースのカーテンを突き抜けてどんどんやって来る光線の熱が苦手なので、遮光カーテンをひく。それでも太陽の煌きが遊んでいるのがわかる。
 悲しみは一つも転がっていない。
 ねえ、たった今この晴れ間だけでほどけてゆくものなんだよ‥


 「はなまるマーケット」を見ていると、近所の幼稚園のこども達が家の横を並んで歩いていった。先生と一列になって「きゃあ、きゃあ」いいながら。
 中学2年のときだったかな。そこの幼稚園に半日、職場実習に行ったことがあった。帰りがけにファーストキスを2人の男の子にうばわれた。かわいさのあまり甘く見ていたなぁ
 腕で、傘の柄とかで練習したりしていたのになー
 それはキスとは呼ばないんだよ。
 本当の最初は、高校2年の16歳の夏にやってきた。ことばが沈む拭えない空気の重さと、軽いショックとがごちゃごちゃに。彼の制服のシャツの衿と自転車ごしの距離を、やけに覚えている。ちかくなってみないと、しっかりと力強い腕にも気付いていなかった。