岩手にある母の実家、祖父と祖母は今も元気に広い土地で農業をしている。子供のころは夏休みになると長く泊まって、いとこ達と虫取りしたり肝試ししたり、とにかく遊んで食べて並んで寝た。はだしで床を走り回ったサラサラの木の温度、蚊帳のなかで眠るのがうれしくてたまらなかったこと、わたしを包んでた匂いも、なくなってしまうんだろうか。
 父と母が新米を買ってきた、米袋、りんごやお赤飯、かすかにあの匂いがする。おばあちゃんはいつもお赤飯をたんともたせてくれる。栗と小豆のごろごろ入ってるやつ。今日のは小豆と胡桃!だった。
 茶碗によそう時、稲から育てた祖父と祖母のことを考えた。わたし、また忘れてしまうんだろうけど、それでも。