湯気と夜風。

 ぎしぎしとにぶく刻み始めた歯車。まわる、まわる。
 ほおづえついても、心をくすぐる風に誘われるよにして表情くずしてみせる。それはとても簡単なことなのに、頑なにつまらぬ素振りしていたのはなぜだろう?
 意地になって守ってたペースを乱されて、当ても外れて、身の縮む思いをする。どんなに恥ずかしさの波に溺れても、繋いだその手のぬくもり知ってしまったから。


 湯船のふちに頭のせたら天井を仰いで。スイッチはoff。ぼんやりと対岸に揺らぐ炎はまぶたの中に、私は眼を閉ざしてふうーっと息をはく。のこらずからっぽに。
 たかい、たかい、空に突き進んでくイメージ。頬を冷ます風といっしょに、どこへでも行こう。