東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
 4月から東京にいく友だちのお別れ会。女の子3人で、ごはん食べることにしていた。一番町のひな野で夕飯とまずは一杯。お別れなんて言ってても、実感しないままかんぱーい。
 前に男の子も入れて飲んだときには二人から渡したけど、今夜は一人ずつプレゼントを用意していて。友だちからはオルゴール、あたしはリリーフランキーの「東京タワー」にした。今ちょうど読んでいて、すごく笑えるのとするする捲れるがよくて、あと家族の話も二十歳すぎると抵抗なくへんな構えも薄れてくるから。ま、そんな理由より面白いからよんでみてと思いつきみたいな贈り物。
 メインは二人からの手作りアルバム。もう一人の子が短大で函館に行くときにも作ったのがきっかけで、私たちの中では結婚する子にあげたり特別なプレゼントの一つになっている。
 新しい東京での彼との暮らし。何もかも大きく変わる彼女に、何度も繰り返し見たくなるようなとびっきりの一冊をあげようと、半月近くかけて作った。あたしが沖縄で撮った写真や二人からのメッセージ、歌の歌詞から借りたことばも交えて、いくつものキラキラした笑顔を綴じこめた。歌は吉田美和の「A HAPPY GIRLIE LIFE」とスピッツの「春の歌」から。
 こんな風に手作りできることを楽しんでいた。何にも代えられない誰かに、ちょっと不器用なまんまを手作りするのは、もう学生じゃなくなったからこそ楽しいのかもしれない。思惑通り何度も見てくれていて、胸んなかでピースでした。
 そしてこの日は9日に誕生日だったもう一人の友だちにも内緒で用意していて。あたしは瀬尾まいこの「幸福な食卓」、友だちからは写真をコラージュしたもの。そしたらあたしにも内緒でそれを作ってくれていて。びっくりです。引越し準備でいそがしいのに、いやそうじゃなくたってうれし過ぎます。不意を突かれてありがとうを何回も言ってしまったけれど、お返しのリアクションに乏しくなるぐらい、ありがとうです。
 私たちの奥の席ではどこかの会社の人達が、送別会と引継ぎみたいなことをしていて。春はやっぱりやって来るのだなと、グラスの中身を飲み干した。
 閉店までいても足りないから、街に住んでる友だちの家の1階にある店で飲むことにした。そこのビルの3階が彼女の実家で、1階の店は昼間は彼女のお母さんがランチを出していて、夜は人に貸していてバーへと変身する。そこで飲むのは初めてだった。店に行くと彼女のお母さんと二番目のお姉ちゃんが飲んでいて、後から一番目のお兄ちゃんもバンド仲間とやってきた。不思議な小さな空間と、無愛想な店の店主。店に不釣合な子供っぽい私たちは、さらに大人とは思えないような話に花が咲く。男の人にはとても聞かせられない話です、おなか痛い程笑いましたが、あそこで封印です。
 そのあとで主役の彼女の恋人がきて、運転してきた彼は烏龍茶で乾杯。深夜にカレーライスを食べながら、旅立つ2人を見送る気もちになった。
 彼女は 恋に素直で真っ直ぐで、出会った時からそうだった。そこがあたしは大好きで、つくづく可愛いと思っている。心に何を抱えてても明るい、友達も沢山いる。彼女に憧れるあたしの本心をアルバムの中にそっと書いた。
 高校生の恋人しかみえなくなってた恋は過ぎて、今の彼と出会ったことで無理しすぎたり自分がなくなる恋愛はもうしていない。ふたりを包む雰囲気がここちよさそのものだから、ただ祈ってるだけ、ふたりの新しい毎日を…。遊びにゆくね。

春の歌 愛と希望より前に響く
聞こえるか?遠い空に映る君にも